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名フィルを称賛する

東海地区で最も歴史ある管弦楽団であり、著名なオーケストラと言うと間違いなく名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)でしょう。このオーケストラの技量がとてつもなくすごいということは、やはりないのかなあと思います。昨年聴いたチェコ・フィルやドレスデンと比較すると、音だけではなく、その見た目の華やかさも圧倒的に違う感じがいたします。地元の最も聴いているオーケストラですから、負けてほしくはないのです。しかし、いかんせん西洋音楽が日本に伝わってきて150年程度ということもあるからでしょう。日常的にクラシック音楽に接する機会があり、さらには3倍以上の歴史もある欧州とは全く環境が違うということなのでしょう。

しかし、我が地方のオーケストラの雄である名フィルです。非常に先進的な取り組みをされ、チラシや演奏会プログラムのデザインセンスも良いと思っています。私にとっては愛する「我が地方の名門オーケストラ」です。

まず、音楽監督に選ばれた川瀬賢太郎氏が好きです。まだ40歳そこそこの年齢で、今後がとても楽しみです。2月定期演奏会は、彼が指揮をしましたが、全演奏曲が、日本人作曲の作品が演奏されました。今まで聴いてきた演奏会では、プログラムのほんの一部にしか日本人の作品は取り上げられず、全く日本人の作品なしというのもまた当然という感じでした。いかにも挑戦的ではないでしょうか。2月の平日夜ということもあってか、市民会館の音響が嫌いという方が多いからか分かりませんが、お客様の入りが芳しくなかったのですが、勇気あるプログラムをやってのけた川瀬監督に敬意を表します。プログラム最後が、外山雄三さんの「管弦楽のためのラプソディ」であったのですが、名フィルが奏でる八木節に合わせて指揮の川瀬さんは、ダンスするかのような指揮をされたり、その前の部分では、尺八をほうふつさせるフルート奏者富久田さんの独奏が印象深く、拍子木の華々しくけたたましい音で始まる冒頭部は、賑やかな日本の祭りを想起させてくれました。こんな日本独特のムードがある曲が世界でも取り上げられるといいがなあと感じさせてくれました。

外山雄三氏は、名フィル草創期の指揮者でもありました。よくテレビでは、外山さんをお見掛けしたと思います。彼の代表作である「管弦楽のためのラプソディ」は、長く愛され続ける日本人作品になるでしょう。できれば、東ヨーロッパのコダーイ、バルトークの作品とも並び称されるようになってほしい作品です。

また、この日の演奏会でのスペシャルゲストは、ピアノ独奏に、作曲もされる小曽根真氏でしょう。「もがみ」と題されたピアノ協奏曲、日本的風情もたっぷり漂わせながら、小曽根氏お得意のジャズの要素も含まれていて、打楽器も数多く、電子オルガンも用いて、大変現代的でもあって。かといって、その形式、音の雰囲気は、フランスの作曲家ラヴェルの協奏曲にも似ていたんです。まさに、和洋ジャンルごちゃまぜ感がある作品。お名前は、たびたび見かけていましたが、やはり素晴らしい音楽家と言えると思います。こうしたすごい音楽家に出会えるきっかけを多く提供してくれるのが、名フィルの定期演奏会ですね。

川瀬監督は、次の4月から始まる新シーズンプログラムにおいて、市民会館のシリーズは、「和洋混交」と題して、毎回の演奏会で、日本人作品を取り上げてくれるようです。以前からも監督は日本人作品を意欲的に取り上げて演奏していましたが、いよいよ川瀬カラーをより強く発揮してきた感じがしますね。

大いに満足して、帰路につく私ですが、座席に帽子を忘れてしまったことに気が付きました。そのことを、会場の係りの方に言うと、「席の位置を確認しますので、チケットを見せてください」と言われました。チケットを差し出すと、会場に探しに行ってくださり、帽子を見つけてくださいました。さほど待たなかったと思います。迅速に対応していただけたスタッフに感謝でした。

帰り際に、大勢のスタッフの方々が、能登半島地震への義援金を呼び掛けていました。こんないい音楽を心地よい気持ちで聴けて「感謝の気持ち」をもって、寄付をさせていただきました。東日本大震災の際には、指揮者である小林研一郎さんが、募金をよびかけていらして、募金をさせていただくと、「いつもの満面の笑み」をもってお礼を言われたのを記憶しています。音楽は、心を浄化させてくれます。能登半島地震で、被災された方々に早くいつもの日常生活が戻ってくることをお祈り申し上げます。