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「徳山ブルース」に出演しました

熱狂のうちに閉幕したようなそんな印象でした。10月28日、29日の両日、揖斐川町地域交流センターはなもも大ホールにて上演された市民参加型オペラに出演させていただきました。ステージ上に立つのは今年の2月以来、オペラのようなものに出演するのは、結婚前年以来のこと。四半世紀ぶりの参加でした。

昔からなじみの脚本家でもあり豆腐屋社長の弓削氏に依頼されて、どちらかと言うと渋々承諾したのがはじまりでした。去年映画「ふるさと」が上映されましたが、それに引き続き、ダムの底に沈んでしまった「徳山」に思いを馳せてみようではないかというイベントでありました。オペラというと、歌は当然ある、セリフもある、動作も結構あるということで、動作についても不安視していたのですが、脚本を書いた弓削氏は、「動きがない役だ」「そんなに出番は長くない」と。イベントの1年以上も前から声をかけられたのを覚えています。私しかいないと言われたのです。楽譜渡されましたが、難しい音符ではないですが、当たり前に歌詞もある。さらに手本となるような、真似できるような音源は創作オペラですからないというところで、役柄がつかみにくくて。私の役は、民衆に対して「自然を壊すな」「自然と共生するのだ」と忠告する神の役!出番は短くステージ上に2分から3分。まさにチョイ役という感じでした。もちろん、暗譜しなければならない!なんか、以前より覚えが悪くあったなあと思いながら、家でも空き時間でも、歌詞を覚えようと頑張りました。なぜ、頭にはいたないのだろうと悪戦苦闘しながら稽古を開始したのは4月からであったのに、ようやくぎりぎりの10月になって覚えられたのです。

本番、「着ぐるみ」を着て歌うかのような衣装で、歩きにくいので、ステージの裏方さんに、衣装の一部を持ち上げていただきつつ階段を上り下りすること10回以上ありました。階段を上るにつれて本番で声を出す瞬間に近づいていくドキドキ感を味わうことになりました。階段の上に着いてからしばらく待機して、実際に歌う位置に移動するのですが、裏方さんの手が、かかっていたので、なんか落ち着くなあという感じがしました。なんというか不安感が減っていくといいますか、人間の熱の持つパワーというものはすごいですね。「着ぐるみ」のような衣装でみなさんに暑いでしょう?と聞かれました。以前の自分であれば、暑かったかもしれません、太めでしたので。しかし、体重が減った今となっては、10月下旬というさほど暑くない季節でしたので、かえってその「ぬくとい感覚」は、精神を落ち着かせるのに十分であったように思います。途中、出番がない時はうとうとと眠くなったり。ステージ上以外では、リラックスモードで、アルファ派が発生しているような感覚でした。ただし、ステージ上の私が歌う位置はかなり高い位置でした。人間2人分近いくらいの高さはあったでしょうか。怖さのために足がすくんでしまい、頭の中で、「安全確保」モードが発令していたようでした。

ほとんど舞台袖で聞いていた身としては、本当に心地の良い音楽がたっぷりで、とりわけ生の管弦楽の演奏付きで聴ける幸せ、すごく楽しい編曲とともに味わえました。ソプラノの高井さんの歌声が素敵、灰塚さんの力強い声の威力もすごいなあとか感じながら。カーテンコールの行進曲調に編まれたメインテーマに乗りつつステージ上を闊歩するのは気分が良かったですねえ。やや奥まったところにいたので割れんばかりの拍手には思いませんでしたけど、2度のカーテンコールで、観客に1人で頭を下げるのも気持ちよさがありました。そこがまた、ステージ上の醍醐味でしょう。「山の神」という特別な役だから、群れて礼は似合わないですからね。

終演後、お客様の見送り。これが一番泣けました。多くの人から、良かったよ!感動した!満足できた、うまかったという声をかけてもらえるのです。「久しぶりに芸術を見せてもらえてよかった」という男性、私となぜか記念撮影したがりまして、撮影しました。あの衣装、さほど重いわけではないですが、制作いただいたご近所の方、非常にステージが気に入られ満足気でうれしくて泣かれてました。私も、それにもらい泣きでした。

多くの人が一つの作品を作り上げる、総合的な芸術品であるオペラって素晴らしい!人々を笑顔にさせる芸術、平和であるからこそ、このような芸術が楽しめるのですよね。一番忙しく駆け回っておられたのが、演出の「なみ先生」であったと思います。練習の際は、ここは、こういう思いで演じてほしいというのがはっきりと打ち出される指導でしたね、声のメリハリも大事なことであると強調されつつ、「演ずる」とは、こういうものだということを素人にも分かりやすく説明いただけたと思う。弓削氏の脚本は、ユニークさ、ご当地方言の活かし方、詩的な味わいを含めて何度も読むほどその良さが身体に染み入ってくる感じがしました。舞台が大昔のことでも、架空のことでもなく、まさに現実に起こったことを題材にしていることが、数多くの観衆のハートを捉えたのであろうと思います。作曲、当オペラの企画実行の中心を務められた森三恵子さんの精力的にこのイベントを成功させるという熱意は、多くの団員の気持ちを突き動かすものがあったと思います。もちろん、悲しみの歌、喜びの歌、労働歌と様々は歌を作曲され、どの曲も耳になじむ力強さを感じるものでした。

こうして、この1か月気をもんできた徳山ブルースの公演は、ほぼ満席のお客様に見ていただいて成功裡に終わりました。どうも、年配者ほど心に染み入るのか両親4人とも大満足で帰っていってくれたようでした。1時間かけて来てくれた妻の両親に感謝でした。