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6月に視聴したクラシックコンサートレビュー

6月は、梅雨の季節でジメジメと嫌な季節というイメージがあります。しかし、そのような梅雨の中、出掛けた名古屋でのコンサートでした。2回とも感動があり、そんなコンサートに出会えて幸せでした。外国で書かれた外国人による作品であるのに、芸術作品は、言語の垣根を超えて人々に感動を与えて、生活に潤いを与えてくれるものという認識を強く持ちます。泥臭い損得勘定、人間関係を忘れさせて快楽を与えてくれるものが音楽、美術、書道、食の「美」なのかなと思います。

さて、名古屋の老舗のオーケストラというと「名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)」です。一番規模が大きく、集客力もあります。名フィルは、定期演奏会年間11回がメインで、その次に重視しているのが、市民会館名曲コンサートであると思うのですが、その名曲コンサート年間5回分のシリーズは今年は、「欧州音楽紀行」と題されて開催されました。私は、2年前に会員であったのですが、見事に「コロナ」と重なってしまい、まったく行けなかったので、久々に堂々と行ける状態になってきましたので、再度会員登録しました。1回目は、4月にハンガリーということで終了。6月は、フランスの有名な作曲家2人の有名な作品を取り上げていました。

ビゼーとベルリオーズの交響曲。残念ながらビゼーの曲は、聴くことができず、ホール外のホワイエで聴くことに。楽しげで陽気な調べをスピーカーを通して聴くことができました。あとから、アマゾンミュージックで検索してみたら、とっつきやすいどことなく聞き覚えのあるメロディがたくさんあって、名曲だなあという印象の曲でした。

休憩後のベルリオーズ幻想交響曲は、本日のメインディッシュというところでしょう。指揮は、名フィル正指揮者川瀬賢太郎氏。川瀬氏が、名フィルとの共演を待ち望んでいたこの曲ということであったので、楽しみで楽しみで、胸をわくわくさせていました。第1楽章の慎重な出だしから、引き込まれていきました。指揮者のタクトに懸命に応えようとしているオーケストラの団員の必死さも伝わってくる熱演でした。オーボエはじめ各管楽器ソリストの音色も美しかったけれど、最高に良かったのは川瀬氏の全身を使ったダイナミックな指揮であろうと思いました。約1時間近くの大曲を飽きずに聴かせる力量を川瀬氏は備えていると思わされます。音のダイナミックさ、繊細さを合わせて表現し、第二楽章の舞踏会をほうふつとさせる華麗な舞いは、クラッシックは、聴くだけでなく目でも楽しんでもらうものだと言わんばかりであったと思います。私は、ビジュアルも演奏会では大事な要素であると感じます。幻想交響曲は、生演奏を3度聴きましたが、この日のが一番に思えました。川瀬氏の表現は、作曲家ベルリオーズの心情に一番寄り添っているものでしたから。

その川瀬賢太郎氏が、来年4月から名フィルの音楽監督に就任されるというニュースが7月1日に発表されましたが、この演奏会を聴いた余韻がまだ残っているときでしたので、これも運命だから、今後も現在37歳と若い川瀬氏を応援していこうと決意するのでした。

もう1つは、愛知室内オーケストラの定期演奏会。愛知室内オーケストラ、はじめて聴きに行きましたが、そのオーケストラが目当てではなく、その共演者であり、指揮者であるオッテンザマー氏の演奏聴きたくて出掛けたのです。

オッテンザマー氏は、世界一といわれるベルリンフィルのクラリネット奏者。ベルリンフィルの管楽器ソロ奏者の音の美しさと言ったら、もう筆舌に尽くしがたいですね。フルートのエマニュエル・パユ氏の演奏を名フィルの定期演奏会で聴いたのですが、もう次元が違うという気持ちになったものです。

ベートーヴェン、モーツァルト、メンデルスゾーンというオールドイツ音楽のコンサートで、すべてオッテンザマー氏の指揮。指揮者としては、あまり経歴は良く知りませんが、切れ味鋭く抑揚のついた演奏と感じました。しかし、クラリネットソロをされたメンデルスゾーンの曲が、もう貴意ていて観ていて実に幸福を感じる瞬間であったように思います。真ん中にクラリネットを持ってそれを吹きながら時に指揮をするオッテンザマー氏。クラリネットの音色が、あまりにふくよかで芳醇で、歌心も豊かに、メロディーを歌い上げる様に聴きほれるばかり。もっとも感じたこと2つが、ピアニシモでの音の安定感、品の良さ、美しさ。管楽器で、それなりのボリュームで吹奏するのは容易いことなのですが、小さい音で安定的に美しく奏でることは、大変な技術を要します。もう一つは、他の走者との調和をとりながらの演奏をされていたこと、クラリネットが目立ちすぎず、ヴァイオリンと寄り添いながら吹いている、そんな様子が、オーケストラとの一体感をより強くさせていたようにも思わされたのでした。そのようなこともあってでしょうか、オーケストラの奏者が、大変楽しそうであったのです。この世界的演奏家の近くで音楽ができる喜びというものをかみしめているようでした。超一流の音楽家に触れて、その楽団の芸術力も増すのでしょう。

音楽は国境を超えた共通言語。音を通してつながる友情。大学時代のグリークラブ=男声合唱部の合言葉に「メンタルハーモニー」というのがありましたが、音楽をともに演奏することにより、人々が精神的につながるって大事だよなあと思うところであります。