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会社の最後を看取るのも税理士の役割

開業し、事業を開始することは華やかな出来事です。しかし、それを継続していくことは、決して簡単なことではないと感じています。私自身、これまでに会社をたたむ方を何人も見てきました。中には、夜逃げという形で終わってしまったケースもあります。せっかく築いた関係性が、そのような形で途切れてしまうのは、あまりにも寂しいことだと思うのです。

だからこそ、せっかく開業されたのであれば、できるだけ長く事業を続けていただけるよう支援したいと考えています。失敗の大きな要因の一つは、十分な戦略を持たないまま事業を始めてしまうことではないでしょうか。私どもでは、「経営計画を一緒に作りましょう」とご提案していますが、立案段階から取り組もうとされない起業家の方も少なくありません。

設立から数年以内に会社をたたむ場合、それは結果として、正しい経営ができていなかった証とも言えるでしょう。しかし一方で、20年以上継続し、経営状況も決して悪くない会社であっても、事業を終えなければならない場面があります。代表者の高齢化により気力が続かなくなる場合や、経営者の急逝によって事業継続が困難になる場合などです。

印象に残っている事例の一つに、現職社長の死によって事業が終了した会社があります。その社長とはたびたびお話をさせていただき、先代の葬儀にも参列した、思い出深い会社でした。社長が亡くなられた後、奥様が代表を引き継がれましたが、事業の継続は難しく、最終的に会社は解散となりました。相続税の申告を終え、内容をご説明し、控えをお渡ししたあと、私は仏壇に手を合わせました。

おしゃべり好きで、いつもにこやかだった社長は、今も優しくこちらを見ているような気がしました。奥様が「○○さん、終わったよ。お疲れ様でした」と静かに語りかけておられた姿が、今でも強く印象に残っています。仏間には、亡くなられた社長のご両親の写真が飾られており、端正なお父様と、活発で男勝りだったというお母様のお姿が伝わってきました。こうしたご家族の背景に触れることも、税理士の役割の一つなのかもしれないと感じた出来事でした。

もう一つ印象的だったのは、12月にM&Aが成立し、成約式に出席した際の社長の表情です。75歳を過ぎ、早く引退したいと思いながらも、従業員のことを考えると辞められなかったという方でした。後継者候補として考えていた従業員が急逝し、息子さんについても適性や意思の面から断念されたと伺っていました。

そこで私どもは、「M&Aによって会社を存続させ、従業員の雇用を守る」という選択肢をご提案し、日本M&Aセンターとの協業により、最終的に譲受先が見つかりました。成約までには約2年を要しましたが、その分、社長の感慨の深さが表情から伝わってきました。長年背負ってきた重荷を下ろしたような、安堵の表情でした。ご夫婦そろって何度も頭を下げてお礼を述べられた姿は、今も忘れられません。このような場に立ち会えることこそ、税理士という仕事の醍醐味なのだと実感しました。

税理士は、中小企業にとって非常に身近な存在です。ぜひ、私どもをうまく活用していただき、良い会社づくりを進めていただければと願っています。