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与党税制改正大綱を読んで感じたこと

昨日12月20日に7年度税制改正大綱が発表されました。毎年の関心事ではありますが、今年は「少数与党政権」ということで、どうなるのか非常に注目していました。国民民主党の主張する103万円の壁を178万円に引き上げるという文言が入ったものの幹事長同士が合意した言葉でいえば、正確には「目指して」ということでしたので、きっちりと上げることはされないのだろうなと思っていましたが、この税制改正大綱の具体的内容で見れば、178万円などとんでもない、絶対に飲めないという与党の思いが透けて見えるようです。デフレに陥って、日本の成長が止まった30年程度の間、税などの公的な負担は上がり続けました。消費税は、当時の3倍になり、老年者控除廃止、年少扶養控除廃止、復興特別所得税の創設、森林環境税の創設による新たな税負担増、国民年金保険料は5割のアップです。いい加減、負担を増やすのはやめてほしい、税はできれば減ってほしいと物価上昇に苦しめられる庶民は、「手取りを増やす」という国民民主党の主張を大きく支持したのではないでしょうか。衆議院では一桁しかなかった同党が、これほどに注目されるて、得票数を増やしたのには理由があると思うのですが、それを与党は全く理解していないのです。

そもそも、税は「民主的に決定するべき」という原則があるところ、密室で決められてしまうのがおかしかったように思います。なぜ、消費税の複数税率はやめるべきだ、インボイス制度は事業者の事務負担を増すから導入はやめるべきだという税理士会の主張を聞き入れなかったのでしょうか。確かに欧州諸国は、インボイス制度を導入しています。しかし、日本は、きちんと帳簿に記載する、領収書請求書を保管するという制度が定着しているからと、現行方式でいくべきでした。

消費税(付加価値税)は、そもそも他国では、「戦費調達」のために導入されたものであったようです。所得税、法人税中心の税体系を持っていた我が国税制であったのを、大蔵省(財務省)は、何度も打ち壊そうとしてきたようです。ようやく、平成元年に念願かなって、消費税が導入できました。消費税は、中小企業配慮のもとで、大きな例外措置を認めていました。3000万円までの売上高の業者は、免税、簡易課税制度は、売上高2億円以下の業者に認めていました。今は、ご存じのようにその特例規模は小さくされています。消費税は、税収に大きく寄与することができる、安定的な財源だということで、税率を打ち出の小づちのごとく上げてきて、まさしく「小さく生んで大きく育てる」になるが、現実になりました。さて、いったいどこまで上げようと、政府や財務省は考えているのでしょうか。さて、その消費税に関して、不満が大きいインボイスを廃止するとか、見直すという文言が全く出てきません。税の抜け道をふさぐことにより、税収を上げることしか考えていません。

最初の103万の壁の問題、国民民主党は、有権者の分かりやすい打ち出し方をしました。「手取りを増やす政策」ということを言いました。それに沿って考えれば、与党の案ですと、年収300万の人は、基礎控除10万円しか引き上げられないので、わずか5000円ほどの減税にしかなりません。これでは、手取りが増えたのは全く実感できないでしょう。減税は、国民の可処分所得を増やすことにより、消費を活性化させるのは、認められるところです。いい加減、「大型減税」やりませんか?大型減税こそ、日本経済浮揚の道であるかもしれませんよ。

私は、「基礎控除が、178万円になってもいいくらい」だと思います。基礎控除を高額所得者につけないのは、反対です。こういう改正は、「財源」を生み出すには、どうすればよいかというところしか考えていないように見え、税の基本理念である「公平、中立、簡素」をゆがめているように思います。

10月に行われた衆議院選挙で与党が大敗したことで、税制が多くの人の関心事になったことは、非常に意義深いことであると思います。それに、「税の決定過程が少しは公になった」ことが、 日本の民度を高めることにつながるものと考え、よいことだと思います。さらに突き詰めて、歳出のほうにも、メスが入ることをより期待したいところです。