ときどき、こんなことを聞かれます。
「ここ、看板がないけれど分かりにくくありませんか?」
たしかに、事務所の外観には「目立つ社名看板」を掲げていません。
けれどそれは、「出していない」のではなく、そういう選択をしているというのが正確な表現です。
当事務所から役場までは、直進で約300メートルです。
役場前には、「相続のご相談を意識した看板を一本」だけ設置しています。
「存在がどこかを表す看板」としての役割は、それで十分果たせていると考えています。
一方、事務所のある場所は、山が見え、周囲に大きな建物もなく、落ち着いた環境です。
建物の背景に、池田山、小島山が見える自然に同化した事務所と言っていいでしょう。
また役場から事務所までの道のりには、白い建物は他にありません。
そのため、「役場からまっすぐ行った、あの白い建物」で自然と伝わります。
実は、事務所の看板については、スタッフにも意見を聞いたことがあります。
「もっと分かりやすい看板があった方がいいだろうか」と尋ねたところ、
返ってきた答えは意外にも、
「今のままで困ったことはありません」
「かえって、このすっきりした感じがいいと思います」
というものでした。
毎日この場所で働き、お客様を迎えているスタッフがそう感じているのであれば、
それが現場の実感なのだと思います。
実際、以前は電柱広告や建物上部の社名表記、業界団体の看板を掲げていた時期もありました。
当時はそれが経営上、意味のある選択であったと思います。
しかし、役割を終えたものは、整理していく。それもまた、経営判断の一つということです。
先代からは「白い建物は残せ」と言われていました。
この言葉は、どこかノスタルジーのようにも聞こえましたが、今になるとその意味がよく分かります。
白い建物は、景色を邪魔せず、季節や行事、人の動きをそのまま受け止めてくれます。
主張しすぎず、それでいて確かな存在感がある。
この場所には、それが合っているのです。
当事務所は、看板で選ばれたいわけではありません。
腰を据えて話ができる場所であること、
人と仕事の中身で信頼していただくこと、
そして、そこで働くスタッフ自身が「ここでいい」と感じられることを重視しています。
そのために、あえて静かにたたずむ感じにしています。
これからも、
現場の声に耳を傾けながら、
必要なものは取り入れ、役目を終えたものは手放して、
その時代に合った「見せ方」を選び続けていきたいと考えています。