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戦後80年にあたりブリテン作曲「戦争レクイエム」を聴く

8月10日というと広島、長崎に原爆が投下された直後です。その日に兵庫県西宮にある兵庫県立芸術文化センターでの演奏会を聴きました。戦後80年だけでなく、西宮で言えば、「阪神淡路大震災」からもまた30年、さらにこの演奏会は、文化センターができて20年という節目の記念公演でもあったようでした。

演奏曲目は、イギリスの作曲家ブリテンによる「戦争レクイエム」一曲。一曲ですが、演奏時間が80分程度にもなる大曲です。途中で休憩はありません!ということで、開演前に用をきっちりと済ませて、しっかりとしたプログラムを眺めて、開演を待ちました。この会場は、3度目ですが、本当に雰囲気のいい会場です。3種類の大きさのあるホールがある非常に立派な施設で、好感が持てます。阪急電鉄西宮北口から、屋根のある回廊を通って約2分という便利な場所にあるのが素晴らしいです。午後3時開演という時間設定もいいですね。帰りが遅くなりすぎないのでありがたい設定です。プログラムの表紙が、なんともかわいらしい淡いいろがついた絵が載っていて、大切にとっておきたくなります。プログラムの曲目の解説、作曲家ブリテンの交友関係なども詳しく掲載してあり、非常に好印象です。さらに、文字が大きめで見やすい。入場者の平均年齢はきっと60歳は優に超えているでしょうから、優しい配慮だなあと思わされます。

そして、演奏前に指揮者のプレトークということで、曲を解説していただけました。有名な指揮者、佐渡裕音楽監督が、開設されるので、しっかり聴かせていただきました。佐渡さんの師匠バーンスタインのウエストサイドストーリーの音楽を引き合いに出して、冒頭の不安定、不穏な音作りを解説していました。ブリテンは、反戦平和主義者ということで、「レクイエム」は通常、ラテン語によるミサ典礼文を歌唱するだけなのですが、「戦争レクイエム」だと、途中で、英語の詩がバリトン、テノールによって歌われるという大変大がかりなものです。管弦楽の編成も大規模で、3群に分かれているという説明でした。一群は、フルオーケストラに、混声四部合唱、ソプラノ歌手。二群には、小編成の室内管弦楽団および、バリトン歌手、テノール歌手。三群は、天井から降ってくるような児童合唱に、オルガン。舞台上の指揮者、中央のメインに佐渡さん、向かって左方に配置された室内管弦楽は、別に指揮者がいます。こんな配置を見たのは、私は初めてだなあ。

この演奏会は、8月8日から10日までの3日間同じ演目で、3公演があって、いずれも満席であったようでした。これほど大勢の人が舞台に乗っているのも珍しいですからね。そもそも、これほどの大曲は演奏されないめったに聴けない曲ですから。

今回は、最前列で聴きましたので、頭を左に右に動かさないといけないのは辛かったですが、管弦楽、合唱の大迫力の音、そして、奏者や聴衆の独特の緊迫感、緊張感が味わえました。合唱は、オーディションで選抜された市民だと思うのですが、気迫が伝わってきました。また、児童合唱のが天の天使の声にも聴こえる美しい和声を響かせ、子どもの無垢さを伝えているようでした。これに対して、金管の強烈なフォルテは、砲弾が発射されるかのような感覚、木管の気が狂ったかのような音形は、人間の心の乱れを表しているのだろうかとか想像しつつ、戦争で無数の命が失われたことを、心に刻み、戦死者を悼む気持ちを持ちつつ聴かせていただきました。

戦争で人類が殺しあわない世界を作りたいという思いは誰しも持つものでしょうが、なぜいつまでも実現しないのだろうか。戦争のない世界の実現を、大戦から80年を機会にして、より強く考えていきたいものですね。