公開研究討論会は、今回で49回。来年は、区切りの50回目ということで、長年続いてきた伝統ある税理士会の年中行事として存在しています。毎年のように開催地は変わり、その開催地独自のカラーを打ち出しつつ開催されるのも、また楽しいです。税に関して専門用語が多いので、できるだけ分かりやすく、親しみやすくプレゼンテーションするように工夫しているのも素晴らしいと思います。中には、「寸劇」を交えて、観るものの印象に残るように演出する税理士会もあり、「公開」というのであるならば、税制に高い関心のある一般人、とりわけ大学生などにも聴いてもらえるといいように思う面もあります。
私は、「税制」に対する提言のとりまとめを行う税理士会の部会である「調査研究部」に3期6年所属していました。そのため、公開研究討論会への参加を強く推奨されて、京都、千葉、東京、名古屋で開催された討論会に参加しました。今回で、ライブ配信の視聴を含めて7度目の参加となります。私は、税制の現行の在り方に対する姿勢としては、まずどのような税の仕組みとなっているのかを把握する、なぜそのような税制となっているかを知ることが大事であると思います。そのうえで、実務において税務に関わる当事者が困っているところ、不公平感をあぶりだすことではないかと思います。ですから、現行税制の課題、問題点について、ここが使いにくいのではないのか、納税者本位とはかけ離れているよね(課税当局からは便宜かもしれないものも含め)という観点で抽出し、その解決策を提案する活動を税実務に携わる税理士が行うことは、きわめて有意義なことと考えています。
さて、今回は名古屋国税局の管内である税理士の集まりの「名古屋税理士会」「東海税理士会」の研究発表でありました。最初の東海会は、事前に収録した寸劇動画と会場ステージで行う寸劇をまじえながら発表し、その後名古屋は、手堅く壇上にテーブルを並べての「討論形式」で、3部形式の発表しました。いずれも研究員の成果を限られた時間ですべてを発表するのはできないので、関心のとても高いテーマに絞っていました。東海会は、離婚の際に行う「財産分与」に対する課税、「負動産」問題を現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」にちなんで「どうする財産分与」「どうする負動産」「どうする税理士」の三本立てでの発表でした。
離婚の際の財産分与で、たとえば夫から妻に不動産を権利移転する場合に、譲渡所得として課税されてしまう問題です。実際に金銭が入ってこないのに、課税されては大変であろうということ、課税するべきではないという主張がなされました。もう一つ負動産について、相続しても、売却、収益価値すらなく、保有すると固定資産税がかかってくるという相続しても有難くない財産についての財産評価について、どのように配慮していけばよいかという問題。確かに、よく話題に上ってきます。固定資産税評価額を基準にした評価にしていかなければいけないかと何度も疑問に思います。よく取り上げてくれたと思います。「負動産」(まけどうさん)という言葉は、十分に定着してはいないようにも思うけれど、面白い観点であったと思います。
途中、東海会を指導する伊川先生も劇中にご登場していたのが笑えました。先生は、発表税理士と年齢が近くてなじみやすかったのでしょうか。家康の残した言葉「人の一生は、重荷を負うて遠き道をゆくが如し いそぐべからず」がたびたび登場し、私たちの業務、責務を「重荷」として例えたのも印象的でした。家康ゆかりの地である「岡崎」「浜松」「静岡」が主要都市として存在する東海会。東海地区の有名武将家康のPRを十分に果たしました。
開会式には、開催地の知事でもある大村知事がご来賓で祝辞をくださいましたが、地元愛知のジブリパークの新ゾーンが完成して、新たに入場できるようになるということでPRされたのが印象的でした。電気で走る猫バスの定員がわずかに5人。どれだけの列ができてしまうか心配であると笑いながらお話されていました。前回は、ナゴヤ飯を召し上がってお帰り下さいという宣伝だったと記憶していますが、あれから8年、すっかりナゴヤ飯も全国発信できたという確信があったのか、今回の祝辞には含まれていませんでした。
このように郷土色豊かに、公開研究討論会を盛り上げるのも一つの伝統なのです。(中編終わり 後編に続く)