昨年は、三男の受験イヤーということもあり、好きなコンサート、旅行をやめて、ひたすら息子の応援に徹する年にしていました。その甲斐もあってか、3月には、三男が高校の3年間ずっと思い続けてきた第一志望の大学に合格してくれました。四人の祖父母と一緒に祝う席ももうけました。祖父母は、私たち以上に喜んでいました。その喜ぶ姿を見て私も誇らしく感じたものです。それから、念願の大学には、親子晴れ晴れした表情で入学して、大学生活を送り、長い夏休みを経て、再び授業が始まった10月。早くも半年経ち、親の方も、息子の方も、新しい生活になじんできたように思います。
10月は、多少の残暑が残っていても、汗ばむような陽気になることも少なくなり、歩き回りやすい日々になりますね。屋外で楽しむ催しも良いですね。BBQも良いでしょう。食欲の季節のBBQ、これもまた格別です。私のように、手足が不自由になると、屋内で楽しむ娯楽である音楽鑑賞などの芸術鑑賞も良いと思います。
10月17日は、愛知県芸術文化センターコンサートホールに「究極の室内楽」を聴きに行きました。ずっと辻井伸行さんの演奏を生で聴いてみたいと思っていたところ、前日にメルマガでたまたま見かけたのが、このコンサート。ピアノの辻井さんと、ヴァイオリンの三浦文彰氏のコンビが見られる魅力的なコンサートであると知った。さらには、トランペットの超人的な技巧を披露するナカリャコフの演奏も聴けると。これは、ぜひとも行きたいなということで、前日にチケットをネットで購入。ホール中央の良い席だし、楽しみに行きました。ブラームスのピアノ四重奏曲第1番四楽章、この曲は、シェーンベルクが編曲した管弦楽版がとても好きで何度も聞いているが、実は原曲は初めてでした。それにしても、エネルギーのほとばしりを感じる演奏でした。音楽の推進力で、体が火照るのを感じるほど。できれば、全曲聴きたいくらいでしたね。後半のモーツァルトの狩、シューベルトますは、室内楽曲の中でもとりわけ有名曲。メロディの美しさに聞きほれました。
もっとも演奏時間が長い奏者は、ピアノの辻井さん。やはり、辻井さんのピアノを聴きたいと集まる人が多いのでしょう。ピアノの独奏というのは、今回なかったのです。しかし、辻井さん盲目なので、他の奏者と、目と目を合わせて合図などすることはできないと思うのですが、他の奏者との調和が素晴らしいと感じました。辻井さんの演奏は、他の奏者を決して邪魔せず、引き立てているのですね。ピアノが主旋律パートという場面においても、ひたすら自己主張をしないのが良いと感じます。他の奏者を包み込んでくれる、暖かみのあるサウンドが奏でられるのが辻井さんの特徴なのかと思わされました。本当に、辻井さんのピアノを聴いて他の奏者がより楽しそうになっている様が、その音からは感じ取れます。ヴァイオリンの三浦さんの音色は、実に美しく、瑞々しく、高貴さにあふれています。もちろん、チェロ、ヴィオラ奏者の音も超一流のものです。超一流ソリストが、本当に楽しそうに奏でる音楽、観衆に響かないはずがないであろう。観客の熱狂に包み込まれた一夜でありました。
辻井さん、演奏が終わると毎回、何度も深くお辞儀をされますよね。それに何とか応えてあげたいと思うのです。目で見られるならば、観客の熱い思いは伝わるのでしょうけど、拍手の大きさ、会場の雰囲気で、辻井さんに、「素晴らしい演奏ありがとう」という思いは伝わるのでしょうか。何とか、聴き手の思いを奏者に伝えたいと、そんなことを考えつつ帰路に就きました。辻井さんが、なぜそんなに人気があるのかが、理解できた公演でした。